農薬管理指導士研修会
農薬管理指導士研修会
2月12日に長野県庁講堂で行われた「令和元年度長野県農薬管理指導士更新研修会」というとても長いお題目の講習会に参加しました。この講習会は、「農薬管理指導士」の人たちが資格を更新するために必要な講習会です。当社では農薬管理指導士はいませんが、農薬管理指導士講習会に参加して、農薬の知識を深めるということと、「公共施設等における植栽の病害虫防除業務等に係る事務取扱要領」というこれまた長いお題目の要領があるのですが、そちらに規定されている指定研修ということでもありますので、受講を行いました。
講義の内容としては、農薬管理指導士制度、食品衛生法によるポジティブリスト制度、農薬取締法について、毒物および劇物取締法について、農薬の飛散防止についてなど、多岐にわたります。
今回の講習会でどれも重要な内容ではあったのですが、特に我々造園業者にとって重要だと感じたことは、適正な農薬濃度と、ドリフト対策です。
農薬の適正な濃度
農薬の袋や、ボトルには必ず農薬取締法に規定される名称や適用範囲(対象植物、対象害虫)、使用方法などが記載されています。どれも重要な内容ですが、農薬の散布濃度にここでは注目してみたいと思います。
我々造園業者が使用する農薬は、ほとんどの場合、数十倍から数千倍に希釈して使用します。たとえば、殺虫剤のスミチオン乳剤はアメリカシロヒトリに対して500から1000倍で使用すると記載されています。
さて、指定の濃度で、防除して完全に害虫を駆除できればいいのですが、もし生き残った害虫がいると、その害虫は薬剤に対して耐性をもった可能性があります。スミチオン乳剤は実績もあり、耐性のできにくい薬剤ですが、殺菌剤などは相手が菌類やウィルスなので、突然変異が起こりやすいことは言うまでもありません。
ですので、農薬は心配だからといって、薄い濃度で散布することは間違いです。指定の濃度で、丁寧に散布して、確実な効果を上げることが重要です。特に殺菌剤などは同じ薬剤を使用し続けると、MRSAのような多剤耐性菌を生み出しやすくなるため、作用機構の異なる薬剤をローテーションして使用し、確実に防除することが大切です。
ドリフト対策
ドリフト!と書くとなにやら自動車で滑っていそうな雰囲気ですが、農薬散布のドリフトととは、薬剤を散布したときに薬剤が飛び散ってしまう事を言います。
消毒を打つ人の技量にもよりますが、多かれ少なかれ発生してしまいます。特に風の強い日などは、消毒そのものを避けなければなりません。農家がよく早朝に消毒を行うのは、暑い日中を避けるということもありますが、早朝は風が弱いということもあります。
さて、この余分に飛び散ってドリフトした薬剤が人や車にかかることはもちろん問題ですが、農作物にかかってしまったときはとても大きな問題となります。
先程のスミチオン乳剤は非常に多くの作物に登録があるので、まだ救いようはありますが、収穫時期などのタイミングによっては残留基準値をオーバーすることも考えられます。
もしこの残留基準値をオーバーすると、作物は市場から即回収ということになります。さらにレトルト食品など、加工食品として市場に出回っているときはさらに被害は甚大です。具体的には、人参1本から基準値を超えて農薬が検出される→その畑から出荷された人参はすべて回収→その畑から採れた人参で加工されたレトルトカレー数十万食が回収、にんじんジュース、野菜ジュース、スナック菓子・・・被害額は恐るべきものがあります。そのうえ、ニュース等にも間違いなく取り上げられるので、風評被害まで発生する恐れがあります。
林笠では、このようなことを防ぐために、防護ネットや、飛散防止ノズルを使用するなどの対策を行っています。
いずれにしても、当社は食用作物を取り扱っているわけではありませんが、正しい農薬の知識をもっていないと思わぬ被害を巻き起こす可能性があります。
日々精進ですね。