ICTを活用した工事

2023年3月4日

昨今の建設業界はドコモかしこも人手不足です。決してゆるくない工期と人手の確保に四苦八苦するのが常となっています。そんなご時世ではありますが、世の中うまくできているようで、建設機械の進化によって、人手不足を解消する手段がいくつかあります。

今回は、民間工事で工期短縮と人手不足の解消を行った事例をご紹介したいと思います。

どんな現場で活用したか?

今回ICTを活用した工事現場は、弊社にて受注している「城山公園駐車場整備工事」です。課題としては、

  1. 測量や丁張を設置する管理する人員が不足している
  2. 現場で作業できる作業員さんが不足している
  3. 工期が限られている
  4. 限られた場内での土や既存の砕石の再利用がある
  5. 設計内容が固まりきっておらず、構造物の変更がある

以上のような課題がありました。つまり、短時間に丁張や測量を最小限にしつつ、限られた作業員さんで短時間に効率のよい現場運営が求められました。昨今の建設現場での問題丸出しの典型例のような現場です。

MC(マシンコントール)が使えるか?

そこで登場するのが、マシンコントロール(MC)のバックホウです。通常であればこの規模の現場には、まず導入することはないのですが、実験的な意味合いも含めて導入しました。通常、MCの重機を導入する際には、三次元の現場データを作成してTINメッシュに分解して・・・と前段取りに非常に時間もお金もかかります。また、設計内容に変更が出るとそのたびにデータを作成しなければなりません。そのような状況では通常マシンコントロールの重機を使用したくても、データ作成に時間と経費がかかって、現場に乗り込んでも設計変更のたびにデータを修正していては元の木阿弥です。

だったらどうするの?

そこで、発想の転換をしました。通常は土をどのように掘ったり盛ったりするかという点に注目して3Dデータを作成するのですが、今回は仕上がり面のみのデータを作成しました。これにより、以下のメリットが生まれます。

  • 構造物の変更ごとに3Dデータの修正が不要。
  • そもそも複雑な土工のデータを作成する必要がない?

ということになると、複雑な3Dデータ通りの土工ができるマシンコントロールの重機を導入するメリットがなさそうですが、実はそうではありません。 ポイントとしては、マシンコントロールとマシンガイダンスの中間の使い方をすることと、重機のオペレーターさんにどのような構造物の掘削であるかをある程度把握してもらうことで解決できるのです。ということで、次のような活用をしました。

造成工事(土を動かす工事)

仕上がり面がわかっているので、舗装やその下の路盤砕石分を引いた、35cm程度を仕上がり面からマイナスオフセットして掘削盛土しました。通常であれば、丁張を立てて、丁張との間に水糸を張って、スケールで高い低いを計測しながら切り盛りするのですが、オペレーターにまかせておけば所定の造成面が施工されます。また、路盤工事も同じく、仕上がり面からのオフセットを変えるだけで、所定の厚さの路盤が完成します。

作業土工・床堀

構造物を据えるための床掘りですが、こちらも仕上がり面からオフセットするだけで必要な深さの床掘りができます。水平が必要な床掘りは所定の標高をセットすると加堀することなく掘削ができます。

さて、ここまで説明すると勘の良い方ならばお気づきかもしれませんが、「深さがわかっても掘る場所がわからないのでは?」と思うかもしれません。大丈夫なのです。掘る場所は、バックホウのモニターに自分が掘っている場所が示されるので、余掘りをにらみつつオペレーターさんが土質を判断しながら掘削すればよいのです。

それでメリットはあったのか?

結論から言うと、メリットずくめでした。今回の現場では造成や床掘りのために丁張を立てることはありませんでした。 床掘りでは、掘削が終わってから丁張を立てるので、現場あるあるの

  • 丁張が邪魔で掘削がしづらい
  • 掘削していたら丁張を壊してしまった
  • 泣く泣く丁張をかけなおす

といったことが起こりませんでした。掘削・床掘後に丁張が掛けられるメリットは計り知れません。

造成についても、丁張を立てることがないので、先行して仕上げたい場所や、とりあえず埋戻しなどの場合も、ツギハギ状態でも現場が仕上がっていくので、とても不思議な感覚です。 また、造成や床掘りでも共通することですが、手元といって、所定の高さになっているか確認する人員を配置しなくて済むので、人員削減ができます。邪魔な丁張を掛けない掘削で効率が上がるので、施工スピードも向上します。

今回は、杭ナビという測量機器も導入しているので、経験が浅い技術者でも丁張をかけることもできました。実際に新入社員、経験1年未満が丁張設置を一手に引き受けています。

デメリットとしては、GPS方式のマシンコントロールのため、施工誤差が最大で3cm程度あり、構造物の基礎砕石には向かないのと、マシンコントロールに頼りすぎると施工スピードが極端に落ちるということです。

機械を参考にオペレーターの勘と腕で掘削したほうが、施工スピードが向上するということがわかりました。この点を踏まえると、次回はさらなるスピードアップに繋がると思います。

採算はとれるの?

気になるコスト面ですが、今回のマシンコントロールのバックホウを導入するに当たり、おおよそ2ヶ月で100万円以上、余計に費用が掛かっています。一方で、丁張をかける人員や手元、施工効率と工期短縮を考えると元は十分に取れていると思います。

ただ、今回は施工条件や規模がMC向に有利だったり、民間工事だったりといろいろな条件が重なったため、メリットが発生したともいえます。公共工事でMCを導入しようとすると、もれなく様々な儀式とも言える成約が課せられるので、少なくとも数倍の施工規模でないと採算が合いません。 今後は民間工事でも、なんちゃって3Dデータの活用で、マシンコントロールも状況によっては十分に活用の道があるといえます。