コリンズシステム

2020年5月30日

憂鬱なコリンズシステム

コリンズとは?
一般の人にはまったく馴染みのない名前だと思います。建設業をしている人でも、ある程度以上の規模の工事をしている現場代理人さんだとか、事務系の人でないと馴染みのない名前です。正確には、「工事実績情報システム」といって、英語名の「Construction Records Information Systems」の頭文字をとって、コリンズ:CORINSと呼ばれています。このほかにも、工事カルテなどとも呼ばれていますが、建設業界の総本山である国土交通省では、「コリンズ」とカタカナ表記が正当らしいので、こちらでもこれに合わせてコリンズとしていきます。
コリンズはある一定以上の規模の公共工事では登録が義務付けられています。たとえば、国土交通省の基準では、受注額が500万円以上の場合にはこのシステムに登録しなければなりません。

どうしてコリンズができたの?


この話をすると公共工事の入札の仕組みと歴史を深く掘り下げることになるので、とても長い話になるのでざっくりと解説すると、公共工事の入札をするときに、受注を希望する建設業者にどのような実績があるか確認するためです。
例えば、私どもで受注している新町・長野緑地管理工事では、入札の要件に「同種工事の施工実績で剪定本数が2,320本以上」という項目があります。応札した業者がこの本数の工事を本当に施工したかを証明するとなると、けっこう大変です。コリンズなしに証明しようとすると、工事の請負契約書の写しと、本当に完成した工事で有ることを証明するために、検査完了通知書、最終の設計書が最低でも必要で、発注者は受注者が提示した工事の発注機関に確認しなければなりません。縦割り行政で横の連携が必要なるので、まず行われません。このような煩雑な作業から発注者、受注者を開放するための仕組みなのです。

なぜコリンズは憂鬱なのか


非常に画期的に思えますが、けっこうこのコリンズは憂鬱なのです。細かいところを突っ込むとキリがないのですが、
・制度がたまに変わる
さきほど受注額が500万円以上の際に登録義務が発生すると書きましたが、制度のスタート時には5,000万円以上でした。これが時間を置いて徐々に引き下げられてきた経緯があります。でもこれは頻繁なことではないので大きな問題にはならないのでまあ良しとします。
・忙しい時期に事務手続きが発生する
工事の受注時に登録することはもちろんですが、変更契約や技術者の変更があったときには変更登録が必要です。工事が竣工したときには竣工登録を行います。ただし金額変更の際には登録の義務がありません。登録は変更日から稼働日で10日以内と定められています。
変更契約とコリンズの変更登録が必ずしも連動していないので、あとからうっかりという種になったりします。年度末などは、変更契約ラッシュが来るため、非常に煩雑になります。まれに変更契約日があとから決まる場合もあったりするので、その際には現場代理人含めて事務方も泡を食います。
竣工登録の際は、現場代理人もパニックになっていたり、後述しますが登録内容が謎なのでとても時間がかかります。
・登録システムWEBサイトが謎
幾度ものシステム改修でだいぶ利用しやすくなったのですが、まだまだ改善の余地がたくさんあるコリンズ登録システムのWEBサイト。以前は「わかっている人でも操作方法に悩む」ものでしたが、最新のサイトでは「わかっている人なら操作できる」程度になってきました。どれくらい優しくないかというと、文章状で入力する項目があるのですが、数字・アルファベット、空白はすべて全角です。コンピューター屋さんの都合なのでしょうが、ユーザーに負担を求める部分ではないですね。このあたりからコリンズシステムの設計思想が伺えます。特に間違えた半角スペースを探すのは大変です(検索しろという話もありますが・・・)。
・登録したいけど登録できない
ここが一番重要です。先にも記載しましたが、コリンズは受注者に施工実績があるかを調べる仕組みです。我々としては、施工実績の検索されそうな内容を登録しなければなりません。一方、どのような実績が入札要件になるかは不明です。新町・長野緑地管理工事の要件のようにわかりやすいものであれば植樹本数などを登録します。でも造園はとても幅が広いのです。公園工事を例に上げると、敷地の造成工事から始まり、電線管路、照明設備、給排水管路、水飲み、トイレ、あづま屋、ベンチ、看板やサイン、石組みや擁壁、グランド舗装やレンガ舗装、アスファルト舗装などなど一般に植木屋さんの植栽以外でも数多くの仕事を行います。何が要件になるかわからないので、内容の吟味が非常に重要になりますが、なんとコリンズでは造園工事としてこれらの植栽以外の部分は登録できません。水車を作ったとしても登録先が用意されていないのです。たぶん建設業の中でもっとも登録に悩む業種です。※実際には仕方ないので、すべて「その他」という欄に登録していますが、多岐にわたる工種をすべて登録しようとすると、入力欄が足りません。

コリンズの未来


見事に愚痴のような内容になりましたが、コリンズにはこの他にも様々な機能があり、うまく活用すると結構面白いことができたりします。また、このコリンズには壮大な計画があるようです。このコリンズを運営するJACICという団体は積算システムやコリンズ、電子入札システムなどを手掛けています。将来的にはすべてのシステムを連動させて、入札・積算・現場さらには電子納品に至るまで、一貫したシステムを構築しようとしているようです。たしかにうまく機能すれば期待できるシステムになりそうですね。 その際には造園業界にも光を!